「子供は覚えるのが早いから羨ましい」。よく耳にしますし、自分でも新しいことを始めようとするときはそう思います。大人になってから英語を始めると、どうしてもぐんぐんと吸収する子供と比べて「もう手遅れなんじゃないか」と感じてしまう人も多いと思います。
私はこども英会話講師をしていた時期があります。その経験から言えるのは、子供と大人の学び方には、確かに決定的な違いがあるということです。ただ、それは「子供は覚えが早くて大人は遅い」という単純な話ではありませんでした。
こども英会話講師として見てきた、子供たちの学び方
指示はすべて英語、それでも子供たちは理解していった
教室では、学校の方針ということもあり、指示は全部英語で出していました。教室内の日本語は一切禁止。「立って」「座って」「このページを開いて」、そういう動作の指示にとどまらず、アクティビティの説明や、小学生以上のクラスではその日に練習する構文の説明もすべて英語で伝えていました。
驚いたのは、幼稚園くらいの子供たちだけでなく、それより小さい赤ちゃんに近い年齢の子たちでも、繰り返し同じ指示を聞くうちに、ちゃんと理解して動けるようになっていったことです。
さらに面白かったのは、指示の中で使っていた単語を別の場面で使っても、子供たちがその意味を理解するようになっていったことです。例えば指示の中で覚えた単語が、絵本の読み聞かせや歌の中に出てきたときも、ちゃんと反応していました。一つの場面で覚えた言葉が、別の場面でも通じる言葉として定着していく。日本語に訳して覚えたわけではないのに、です。
これはまさに、脳内英訳をやめて英語脳になる方法の記事で書いた「英語を英語のまま理解する」感覚そのものだと思います。子供たちは、最初から自然とその感覚で言葉を学んでいたということです。
間違えることへの不安より、「できた」という喜びが大きい
大人になると、自分が使っている英語が間違っているのではないかという不安から、言葉が出なくなるということが多いと思います。ただ、なんとなくのイメージで、子供は間違うことは気にせずにどんどん発話できるものだと思われることもあります。子供たちの中にも、間違えることを不安がる子はもちろんいました。これは子供だから何も気にしない、というわけではありません。
ただ、大人と決定的に違っていたのは、不安があっても言葉自体が出てこなくなる、ということがほとんどなかった点です。その子によって、間違っていたらどうしようという躊躇を強く感じる子もいました。そういうタイプの子でも、「できた」という喜びの方が、「間違っていたらどうしよう」という不安よりも、はっきりと上回っているように感じました。

大人と子供、決定的に違っていたところ
前項でも書いたとおり、大人の英語学習でよく見る光景はこれとは逆です。間違えることへの不安が強く、言葉そのものが出てこなくなる。知識はあるのに、口を開く前に止まってしまう。うまく言えたのかどうか、発話したあとも不安が残る。保護者クラス(プライベートレッスン)も担当していましたが、そういう不安や自信のなさが消えることはなかったように思います。どれだけうまく会話が進んでいてもです。
これは、以前辞書を抱えてチャットしてたら英語が話せるようになった話の記事でも書いた「間違っていたらどうしよう、という恐怖心」と同じです。子供たちにこの恐怖心がないわけではないのに、それでも言葉が止まらない。その違いがどこから来るのか、講師をしていた当時、よく考えていました。
子供の学び方から、大人が取り入れられること
子供たちが日本語に訳さずに、繰り返しの中で言葉を吸収していった様子を見てきたからこそ、私自身が後になって洋楽の完コピや、字幕なしで映画を見る練習をしたときに、「これは子供たちがやっていたことと同じだ」と気づきました。理屈で理解するのではなく、繰り返しの中で「ああ、これはこういう感覚なんだ」と腑に落ちていく。あの感覚は、教室で見ていた子供たちの姿そのものでした。
「できた」「わかった」という喜びを、「間違っていたらどうしよう」より先に持ってくること。これは大人になってからでも、意識すれば取り入れられる部分だと思います。
大人には大人の強みがある
とはいえ、子供のやり方をそのまま真似ればいい、という話でもありません。
大人は子供と違って「なぜそうなるのか」を理屈で理解する力があります。文法のルールを説明されて納得できるのは、大人の強みです。子供たちが感覚だけで何年もかけて身につけていくことを、大人は理屈の力で短縮できる場面もあります。
子供のように「できた喜び」を不安より先に置きながら、大人だからこそ使える理屈の理解も組み合わせる。どちらか一方を選ぶ必要はないはずです。

まとめ:子供のように、大人の強みも活かして
子供たちを教えていてわかったのは、子供の学習能力の方が優れていて大人は吸収力も落ちていて難しい、という単純な話ではないということです。
子供たちは、間違うことへの不安より「できた」という喜びを先に置いていました。そして、訳さずに繰り返しの中で言葉を理解していく感覚を、最初から持っていました。
私たち大人も、かつては子供です。当たり前のことですが(笑)大人になった今からでも、その感覚を意識的に思い出し、取り入れることはできます。そこに、大人だからこそ持っている理屈で理解する力を組み合わせれば、より英語練習の成長スピードを実感できるのではと思います。

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